【10分読書】「メフィスト賞」受賞作品
10分読書 |
2015年2月17日(火)更新 テーマ:「メフィスト賞」受賞作品 |
毎日の朝の移動時間は、読書で充実な一日をスタートしませんか?楽天Koboより、平日の毎朝10分程度で読めるオススメ書籍の冒頭を部分をお届けします。本日は、本が大好き楽天入社6年目のあつみんの「メフィスト賞」受賞作品のおすすめをお送りします。 ※実際の表記が縦書きの作品についても、本企画では横書きで表示されます。予めご了承ください。 |
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第一章 「初雪」 (一) 朝、玄関のドアを一歩外に出ると、突き刺すように凍った空気がつま先を掠めた。 肌にひりひりと痛いその空気から顔をマフラーで庇うようにして、辻村深月は首を上に傾ける。灰色をした空から、雪が降りてくるのが見える。寒いはずだった。 白く息を吐きながら自転車の鍵を左手に取る。すると丁度、玄関から母親が出て来るのが見えた。 |
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第1章 白い面会 1 今は夏。彼女はそれを思い出す。 無表情なコンクリートで囲まれた部屋には、季節の気配が届かなかった。建物のどこにも、外界を覗き見る窓はない。歴史も時間も人工的に刻まれている。寒くも暑くもない。 おそらく、人間以外の生物、動物も植物もここには存在しないのではないだろうか、と彼女は思う。 明る過ぎるくらい真っ白な小部屋には、本当に何もなかった。 |
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第Ⅰ章 一日目 1 「君、バスで本なんか読んで、よく平気だな」 下を向いていた藍子の横で、いきなり、男が大声を張り上げた。 その、他の乗客もいることを意にも介さないまるで無遠慮な声量に、藍子は眉を顰めて問い返す。 「平気って、何がです?」 「このバスはひどく揺れる。エンジン振動と固いサスペンションと急カーブの合成波で、僕の胃袋はさっきからひっくり返りそうなんだ。 |
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